『若恋』榊の恋【完】
前広の電話を切り、車を北に向けた。
あと数分でひかるちゃんが連れ去られたと思われる廃墟病院へ着く。
♪♪♪♪♪♪♪♪
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「榊の携帯だぞ」
黒電話の音と。
非通知の表示と青く光るランプ。
「もしもし」
息が詰まって声が掠れた。
『榊、おまえの女を預かっている』
「あなたは誰です?」
『この間、あんたに撃たれた男だよ。おかげで右足が動かない』
「わかりませんね。大勢いたので」
『だろうね』
電話の奥で声に出して不気味に笑っていた。
「で、彼女は無事ですか?」
『ああ、今のところはね。けれど、この先は保証できないけどな』
まだ笑いを引っ込めない。
「わたしにどうしろと?」
狙いは自分だ。
ひかるちゃんはおびき寄せる餌だ。