『若恋』榊の恋【完】
「若、ありがとうございます」
「ん?なにがだ?」
「ひかるちゃんのことです」
「りおの妹は俺にとっても大事な妹だ。絶対に無事に連れ戻す」
若が力強く話す。
「前広たちをこちらに呼びます」
「ああ、そうしろ。銃はすぐ抜けるようにしとけと伝えろ」
覚悟は決まった。
銃撃戦は確実だろう。
ただひとすじにひかるちゃんを無事にこの手に取り戻したい。
若が指示した通りに前広たちを呼び寄せる。
たぶん同時に着くだろう。
「裏に回りますか?」
「いらねえな。正面につけて堂々と乗り込む。あっちがそういうように誘ったんだ。それに乗ってやれ」
段取りはない。
正面から乗り込んで龍神会残党を狩る。
ひかるちゃんを助け出す。
「榊、」
「何ですか。仁」
「ひかるを…妹を頼むぞ」
ひかるを妹を頼むぞ。
そう言って、仁の横顔が笑った。