『若恋』榊の恋【完】




「榊の言った通りだったな」


毅が襲撃された交差点から北へ数百メートル。

元は胃腸科の病院だったところだが、院長が急死してからは次の医者が引き継ぐでもなく放置されたままだ。

門には錠がかってあったがはっきりいって子供でも乗り越えられる高さだ。

ガラス切りでどこかの窓を開ければ自由に出入りできる。


建物を見上げた。



「いますね」

「向こうはある程度来るだろうと予測してたろうけどな。数ではこっちの方が多いが罠が仕掛けられてる可能性もあるな」

「前広たちは?」

「今、到着しました」

「仁、一也と拓也と真っ正面から行くぞ」

「わかった」


仁が正面玄関のガラスに宣戦布告の合図を撃ち込むと、派手な硝子の砕ける音が敷地内に響き渡った。



「妹を返してもらうぞ!」



仁が奥まで届く大音声を上げた。



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