『若恋』榊の恋【完】
間一髪で頬を掠める風。
仁が体を反転させてまた一発で金髪男を仕留めた。
「ちっ!」
額から弾け跳んだ血飛沫で白い壁が一瞬にして朱に染まった。
「きゃあああああっ!」
猿轡を噛まされていたひかるちゃんが、くぐもった声で絶叫した。
「ひかるちゃん!」
目の前で体が折れ崩れていく男を見てひかるちゃんが手で顔を覆った。
すぐにでもひかるちゃんをこの場から連れ去りたい。
血生臭い世界から遠ざけたい。
世の中の汚れたものから守れるように…。
「俺は端から助かろうなんて思ってねえ。榊を道連れにするか、女の命をとる」
「ふざけんな俺の妹を出せるか!」
仁が叫んで一歩前に出た。
「よせ!」
反応して仁の足元に来るなと撃ってくる。
「榊、てめえに選ばせてやるぜ」
屍を見て悲鳴を上げたひかるちゃんを助け出したいに決まってる。