『若恋』榊の恋【完】



「榊さん、どうして逃げてくれないのっ」


ひかるちゃんの目が真っ赤だ。

近づくとその距離は数メートルしかない。



「榊、よほどこの女が大事なんだな」

「だからどうだっていうんです?」



「それ以上近づくとこの女に穴が空くぜ」


引きつった顔の男がひかるちゃんに銃を向ける。




「死ぬ時は一緒です」



もう迷わない。

生きていくのも一緒。
死ぬ時も一緒だ。

どちらかが死ぬっていうんなら自分が死ぬ。


ひかるちゃんがそれで助かったとしても喜ばないだろう。


「ひかるちゃん、死ぬ時は一緒です」



「…榊さん」



一気に間を詰めてひかるちゃんに突き付けていた銃を掴んだ。


力では負けない。

銃口がひかるちゃんから男の方へと捩れる。



「ちくしょ、榊、どけ!」

「力では負けません」




< 114 / 440 >

この作品をシェア

pagetop