『若恋』榊の恋【完】
「榊さん、どうして逃げてくれないのっ」
ひかるちゃんの目が真っ赤だ。
近づくとその距離は数メートルしかない。
「榊、よほどこの女が大事なんだな」
「だからどうだっていうんです?」
「それ以上近づくとこの女に穴が空くぜ」
引きつった顔の男がひかるちゃんに銃を向ける。
「死ぬ時は一緒です」
もう迷わない。
生きていくのも一緒。
死ぬ時も一緒だ。
どちらかが死ぬっていうんなら自分が死ぬ。
ひかるちゃんがそれで助かったとしても喜ばないだろう。
「ひかるちゃん、死ぬ時は一緒です」
「…榊さん」
一気に間を詰めてひかるちゃんに突き付けていた銃を掴んだ。
力では負けない。
銃口がひかるちゃんから男の方へと捩れる。
「ちくしょ、榊、どけ!」
「力では負けません」