『若恋』榊の恋【完】
力では負けない。
護るべきものが目の前にある。
ひとりじゃない。
ふたりで乗り越えるものがある。
「死ぬ時は一緒です!」
ひかるちゃんを掴んでいた男の力が僅かに弱くなった瞬間を逃さない。
一気に引き剥がして男の銃の引き金を引いた。
ズシュ
鈍い音がして男の体にめり込んだ。
「てめっ、さかき」
血走った眼で見て肩を思いっきり掴まれた。
撃たれたところを抉るように掴んでくる。
「てめえは道連れに、してやらねぇと、」
「榊さん!」
「やれるものならやってみてください」
男が背を丸めて片方の腕を後ろにして細い何かを取り出した。
繰り出した銀色の光を叩き落とし腕を取り捻りあげる。
「ちくしょ、榊、俺を殺せ」
「ええ、そうします」
生かしておいてもこの先に男には未来はない。
だったら。
このままここで。