『若恋』榊の恋【完】



ひかるちゃんの目を汚してはいけない。

血の匂いのするこの場所から連れ出さないと。



「若、ひかるちゃんを連れていきます」

「ああ、そうしてくれ」

「仁、拓也、後は頼みます」

「いいって。早く行けよ」



無様に転がってる男を八つ裂きにしてやりたかったが、後はみんなが処理してくれる。



「ひかるちゃん行きましょう」

「榊さん、血が…」


縛られてる両手で抉られて出血してる肩を押さえた。

「止まらない…」


ひかるちゃんの目がまた赤くなりみるみるうちに涙が盛り上がった。



「わたしは大丈夫です。それよりもひかるちゃんが」

手首の縄を外してひかるちゃんの手を自由にした。


抱き締めてやりたい。

自分のせいで何度も拐われて危険な目にあったひかるちゃんの無事をこの手で確かめたい。

どこも怪我をしてないか確かめたい。



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