『若恋』榊の恋【完】



「メッセージを刻むことができますがどうなさいますか」


長い髪を耳に掛けた女性が白い手袋で指輪の内側を示した。



「さっきのふたりの指輪に彫ることできますか?」

「ええ、文字数が限られてますが大丈夫です」



「では、」


榊さんが胸から取り出したペンでスタッフが差し出した白い紙に一文字、二文字滑らせ書いた。




【12.4.6 S to H】




来年のひかるちゃんの誕生日16歳になるその日だ。

正式に自分のものになる日だ。



「約束の意味をこめて来年のひかるちゃんの誕生日を。」

「うん、ひかる喜ぶね」



隣で目を細めるりおさんを見てるとひかるちゃんと重なった。

やはり姉妹だ。
似てる。



「りおさん。」

「何?榊さん」


クリクリっとした目で見上げられて今ならさりげなく告げられるような気がした。



< 141 / 440 >

この作品をシェア

pagetop