『若恋』榊の恋【完】



りおさんは未来に掛かる橋を作ってくれた。
ひかるちゃんと出会い、今の自分があるのはりおさんのお陰だ。


「感謝してます」


素直にそう言えるのが嬉しい。




「悪いが時間切れだ」

「若、」



りおさんを抱きすくめるように現れ、まっすぐに嫉妬の目を向けるのは、奥でコーヒーを飲んでいたはずの若だった。



「りおは俺のなんでね」

「わかってますよ。誰も若からりおさんを盗ろうなんて思ってやしません」

「わかってるならそれでいい」



ヤキモチもここまでくれば立派だ。

りおさんには話しかけることさえもかなわない。



「奏さん、あのね。榊さんがひかるに指輪を贈ってくれるの。見て」

花のように柔らかく温かな笑みを浮かべてふたりが寄り添うのを見る。

以前は胸が張り裂けそうだった気持ちが、今は凪いでいる。




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