『若恋』榊の恋【完】
「…ここは?」
「わたしの家族が眠ってるところなんです」
「…家族?」
「母と、亡くなった妹がいる場所なんです」
トランクから花とペットボトルにいれた水、蝋燭や線香を取り出した。
ひかるちゃんが戸惑いながらも花を受け取り、車に鍵を掛けて一緒に歩き出した。
雪がちらちらと降り始めた中を歩く。
「母と妹にひかるちゃんを紹介しておこうと思ってね」
「?」
ひかるちゃんはまだ周りを見渡している。
「ここなんです」
きれいに磨かれている墓石の前でひかるちゃんを止めた。
「ここが榊さんの、」
「ええ、わたしもいずれここに入ります」
笑って、ひかるちゃんから花をもらい供え、持ってきた水をかけ、蝋燭や線香を灯した。
「母さん、里桜、お嫁さん連れてきたよ」
「!」
一緒に手を合わせたひかるちゃんが横でびっくりした顔をした。