『若恋』榊の恋【完】
恋敵
「天宮の成績が最近下がってきてます」
ひかるちゃんを預かっている出前、成績が下がるのは痛い。
担任の若佐ががた落ちしている成績表を手に屋敷に現れたのはつい先ほどだ。
「ごめんなさい、ちゃんと勉強します」
「天宮には姉と暮らすこの環境がまずいんじゃないのか?」
「!」
担任若佐の無礼な言い方にムッとしたが、成績が下がったのは事実なので何も言えなかった。
「次は五十番内に入りますから」
「わかった。だが、これ以上下がったら特別補習だぞ」
まだ若い。
たぶん自分とそんなに歳が離れていないだろう担任だという若佐と目が合った。
「…その指輪は?」
「ああ、これは婚約の証です」
「…誰と?…まさか天宮と?」
「まあ、そうですね」
視線の先を読み、
勘というのか、一瞬で若佐がひかるちゃんに興味を持っていることに気づいた。