『若恋』榊の恋【完】
「特別補習は困るので、勉強させますよ」
嫌みのひとつを返して、申し訳なさそうに肩を縮めたひかるちゃんを若佐の前から隠した。
若佐が目を細めたが構わずに続ける。
「今度のテストで五十番以内ですね」
「入れなかったら、特別補習を受けてもらう」
「わかりました。五十番以内に入れます」
ひかるちゃんはりおさんと一緒に家にいた時には常に五十番以内に入っていたというから、成績を元に戻すのが最優先だ。
何かを言いたげな若佐をあっさりと追い返し、ひかるちゃんの前に座り無言の圧力をかけた。
「言いたいことはわかってますね?」
「…はい」
しおらしくしているひかるちゃんを見つめる。
「五十番以内に入らなかったら特別補習だそうですよ」
「はい」
「わかってるのならいいです」
若佐がひかるちゃんに特別な感情を持ってると気づいただけで学校には行かせたくなくなった。