『若恋』榊の恋【完】
祭りの夜
屋敷に一緒に暮らし始めて数ヶ月。
隣の空いていた部屋に今もひかるちゃんはひとりで眠っている。
「一緒のベットで眠ったらいいのに」
りおさんは茶化してそう言うけれど、りおさんだって若が嫉妬に狂って暴走しなければ、ひとつのベットで眠り結ばれることもなかったわけで…
「ひかるはね、お化けが苦手なの。今日行く夜のお祭りでお化け屋敷に入ってみて。榊さんにきっと甘えるから」
「お化け屋敷ですか?」
「途中で泣き出して榊さんにしがみつくから」
「お化け、ですか…」
屋敷にきて数ヶ月。
ひかるちゃんの怖がりの話を本人から聞いたこともない。素振りもない。
「せっかくのお祭りだからみんなと行くんじゃなくてふたりで行ってきてね」
はい。浴衣。
綺麗に畳まれたひかるちゃんの浴衣に帯。頭につける花飾り。下駄。
「こっちは榊さんの」
「わたしもですか?」