『若恋』榊の恋【完】
りおさんが手渡してくれたもうひとつの包みは若の浴衣だ。
「奏さんのなんだけど、着てみて」
りおさんはにっこり笑う。
ひかるちゃんと同じ笑顔を向けられたら受け取らずにいられない。
「ひかるに浴衣着せてあげてね」
ウインクした時に、若がりおさんの名前を遠くから呼んだ。
「はーい」
りおさんが若の元へパタパタと駆けていく。
―――ふーん
お化けね。
お化け屋敷か…
りおさんから手渡された浴衣を見てひかるちゃんが着てみたのを想像する。
夏の花のような明るい笑顔に浴衣は似合うだろう。
「ひかるちゃんとお祭り、か。…悪くないですね」
お化けを怖がると聞いたら、ひかるちゃんを困らせてやりたい衝動に駆られた。
「お化け屋敷、ね」
藍染めの浴衣を見つめながらひかるちゃんを連れ出すことを決めた。