『若恋』榊の恋【完】
目の前のひかるちゃんは中学生じゃない。
立派な大人だ。
色気のある浴衣を着て、今のひかるちゃんを見ても誰も中学生だとは思わない。
「ひかるちゃんこそ、素敵ですよ」
「榊さんが格好良すぎて…」
ひかるちゃんの瞳が光を放って揺らいだ。
次の瞬間にはひかるちゃんが下駄を手にして笑った。
今のは。
今の涙は見間違いか?
「榊さん、行こう!」
「車出してもらいましょう」
「ううん、歩こうよ」
「でも下駄を履いて、ひかるちゃんの足が痛くなったら」
「わたしは大丈夫!足が痛くなったら榊さんに背負ってもらうから」
ね?
車を出さずにふたりで並んで暮れかかっていく空の下を通りに沿って歩いていく。
同じく浴衣を着たカップルが祭りの方へと向かっていく。
祭り会場に近づくと賑やかさを増した。