『若恋』榊の恋【完】
人混みばかりじゃない。
あちこちの男の視線がひかるちゃんを狙っているのが腹立たしい。
もしはぐれでもしたなら、すぐに声を掛けられるだろう。
顎を掬って紅をさしたくちびるを開かせた。
「ひかるちゃんはわたしのものです」
耳元に告げて、くちびるにくちびるを重ねた。
ピクッ
ひかるちゃんが身を捩るのを逃さず深いキスをする。
ガクッと膝が折れそうになったひかるちゃんを抱き止め、周りから狙われていた視線を薙ぎ払った。
瞳がうるうるしているひかるちゃんの額にもくちづける。
誰にも見せたくないのに、ひかるちゃんは誰からも目を引いた。
ちっ。
自分が舌打ちされてることを知る。
「向こうに行きましょうか」
誰の視線からも守りたくて足は祭り会場の隅に向かっていた。
「―――お化け、屋敷?」
ひかるちゃんの手をしっかりと握りお化け屋敷の入り口に立った。