『若恋』榊の恋【完】
夢の中でも名を呼んでくれるのが嬉しい。
「どんな夢を見てるのやら」
頬をそっと撫でるとひかるが、
「ん?」
寝惚け眼で伸ばした指を捕まえて吸い付いた。
ドクン
薄いくちびるは指先を舐める。
―――抱きたい。
もう一度この胸の中に閉じ込めて自分のものだと確かめたい。
穏やかに過ぎた時間が一変して激情を含んでいく。
そっと半身を起こしひかるのくちびるに自分のくちびるを重ねると、
「ん?…さか、きさん?」
甘い声が誘う。
さっき手に入れたひかるの体を、純血を欲しがる自分がいる。
「―――もう一度」
確かめたい。
うぐいすの宿に来てひかるを抱いたのは嘘ではなかったと。
確かにふたりの時間は重なったんだと確かめたかった。
「ひかる」
「…榊さんなら、いいからだから」