『若恋』榊の恋【完】



「一也!」


叫んでるうちに一也のくちびるが微かに動いた。


「一也、なんです?」

『………、』


聞こえない。聞き取れない。


『…ひ、…』

「ひ?」

『ひか、…る』

「ああ、無事ですよ。一也が守ってくれたので」



すう。

答えると一瞬口元が笑った気がしたが、すぐにコトリと首が垂れた。


「一也!しっかりしてください!」

話し掛けても意識を手放してしまった一也の反応はない。

すぐに人だかりができた輪の端に座り込むりおさんとひかるの青い顔を振り返る。


「大丈夫ですよ」


ふたりを安心させたくて声をかけたが上擦っていた。


「一也さんが庇ってくれたの」

「ええ、そうですね。ひかるを守ってくれました」

「突き飛ばされてなかったらわたし、…撥ね飛ばされてた」

「一也のおかげですね。みんなを守ってくれた」



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