『若恋』榊の恋【完】
救急車に乗り県病へ搬送されすぐに処置室へ。
重く冷たいドアが目の前で閉まると絶望が胸奥底から込み上げた。
一也が死ぬかもしれない。
処置室の前の椅子に座り死ぬなと祈る。
そこへ。
ひかる、りおさんのふたりが到着し、若も仁も駆けつけた。
りおさんが若の姿を見つけ真っ直ぐに胸に飛び込むと若も抱き締め返した。
「りお大丈夫か?」
「うん」
「榊、…一也は?」
若が眉を潜めた。
「今、処置中です」
「どんな具合だ?」
「…撥ね飛ばされた直後は意識はありましたが、途中からは…」
「…そう、か」
若がキュッとくちびるを噛み締めた。
仁も拳を握って怒りを殺している。
「で。相手は龍神会の関わりのあるヤツか?」
「それは…正直わかりません」
「?そいつらはどこにいる?」
「現場で事情を聞かれてます」
「そうか…」
若のため息は深い。