『若恋』榊の恋【完】
りおさん
「………か、きさん、さかき、さん―――榊さん」
「ん?」
「随分と魘されていたみたいだけど、大丈夫?」
気がつくと一階の中庭のテラスの椅子に凭れてて、読みかけの本が、足元に落ちていた。
「………」
りおさんが冷たいおしぼりを差し出す。
「魘されてたから起こしたんだけど…すごい汗…」
「もう大丈夫です。すいませんりおさん」
受け取り、りおさんの目が見れないまま。
冷たいおしぼりを目蓋に当てた。
多分泣いてたんだろう。
鼻の奥がつんと痛む。
魘されていただけじゃなくてうわ言のように何かを話していたんだろう。
「榊さん、あの、」
「…妹です」
もう限界だ。