『若恋』榊の恋【完】
ひかるを愛してる一也。
そのひかるを守った一也。
このまま逝くなんて許さない。
ひかるやみんなを悲しませたまま逝くなんて許さない。
ギュッ
小刻みに震えるひかるを抱き締める。
ひかるは真夏の太陽の花だ。
萎れてはいけない。
みんなを明るい笑顔で照らしてくれなければ。
一也もひかるの笑顔が好きだったはずだから。
「ひかる。笑って」
笑っててほしい。
こんな時だからこそ。
一也は目を覚ますと信じて。
「一也が目を覚ました時に、ひかるの泣き顔より笑っててくれた顔の方が喜ぶでしょう」
「うん」
顔を上げてひかるが涙を拭った。
「一也さんに泣き顔は見せたくないもんね」
「そうですね」
「一也さんはきっと目を覚ますよね」
「覚ましますよ」
震えていたひかるが泣き笑いのまま身を捩って抱きついた。