『若恋』榊の恋【完】
ひかるを支えながら、逆にひかるに支えられている。
ひかるがいなかったら、きっと我を失って暴走していただろう。
「…ひかる」
「一也さん…死なないで…」
ギュウッ
シャツを握りしめふたりで身を寄せ合う。
どれくらい。
刻が経っただろう。
涙を拭いてひかるが顔を上げた。
「一也さんが目を覚ますまでついていていい?」
まだ赤みのある瞳でじっと見つめる。
「いいですよ。わたしも一緒に目を覚ますまでいます」
「うん、ありがとう」
泣いていた顔から少しだけ笑みが溢れた。
悲しみも苦しみも乗り越えるならふたりで。
ふたりで支えていれば、明るい未来は見えてくるはず。
「ひかる」
細い肩を抱き締めて、一歩を踏み出す強さと勇気をもらう。
くちびるにキスを。
泣いて腫れた瞼にキスを。
そして、耳元で。
「愛してる」と。