『若恋』榊の恋【完】
自販機から冷たいお茶やコーヒーを買い、ふたりで処置室前まで戻る。
まだ中はバタバタしていて、看護師が忙しそうに走り回っていた。
長椅子にりおさんを支えるようにして座る若が、ホッとしたように目を細めた。
「落ち着いたみたいだな」
「はい」
見れば、仁もりおさんの隣でさっきまでとは違う落ち着いた表情をしていた。
「冷たいのだけど…」
「ありがとう」
りおさんがお茶を受けとって笑みを浮かべると焦りや緊張が消えた。
若も仁もゆっくりと飲み干す。
「ひかる。これ、あげるね」
向かいに腰を下ろしたらりおさんが腕から水晶のパワーストーンを抜き取った。
りおさんが肌身離さず身につけているものだ。
水晶には青龍が彫ってあって、いろんな危機をその青龍と一緒にくぐり抜けてきている。
「…おねえちゃん」