『若恋』榊の恋【完】
「おねえちゃん、これ。」
「ううん。いいの。ひかるにあげる」
「だって、ね」
ひかるは両手で水晶を持ち戸惑ってりおさんを見る。
「今までわたしを守ってくれた御守り」
「おねえちゃん」
「今度はひかるを守ってくれるよ」
「あ、ありがとう」
りおさんが大事にしていた水晶をひかるが握ったままでいたのを、持って着けた。
「榊さん、ひかるを頼むね」
「はい」
「榊さんと青龍はひかるを守ってくれるから」
「おねえちゃん、ありがとう」
左腕に納まった水晶が光っている。
「―――お願い。一也さんを守って」
ひかるが呟いた。
パタン。
音がして処置室のドアが大きく開いて。一斉にみんなが立ち上がった。
「御家族の方ですか?」
眼鏡を掛けた医者の白衣には所々に血の染みが散っていた。