『若恋』榊の恋【完】
一也が助かった。
運よく骨折もないと言う。
強運の持ち主だと担当した医師は笑った。
頭を打ってるので今後経過を見ながら検査を2、3するとのことだったが入院も3週間ほどでいいだろうと話していた。
「本当に…よかった」
目を覚ました一也の枕元に跪づき点滴をしている腕を握るひかるを傍らに立って見つめる。
「一也、具合いはどうだ?」
「若、」
次々に枕元に押し寄せる仲間に一也が面食らったようだった。
若を見て、起き上がろうとした。
「よせ、黙って寝てろ」
「はい」
起き上がろうとして身体中が痛むのか、わずかに体を揺らしただけで起きるのをやめた。
素直に若の言うことに従った。
「暴走車からりおやひかるを守ったんだってな」
「俺は…突き飛ばしただけです」