『若恋』榊の恋【完】
「いや、庇ってくれてなかったらふたりは危なかったと聞いた」
「………」
「ありがとう。礼を言う」
りおさんがひかるの隣に並び、一也にありがとうと繰り返した。
ひかるとりおさんが一也を見て笑顔になる。
一也も笑った。
大切なひとを守りきったと安堵した笑みだった。
「もうそろそろ、一也を寝かせてあげましょう」
しばらく談笑して、頃合いをみて切り出すと、
「ひかるちゃん」
病室から出て行こうとしたひかるに一也が声を掛けた。
「ひかるちゃん、俺は大丈夫だから」
「うん」
ひかるを熱い目でじっと見つめる。
「また明日、来るね」
「わかった」
一也の視線を遮るようにひかるの背を押して病室から出た。
「一也はひかるにホレてたんだな」
ビクッ