『若恋』榊の恋【完】
二度目の夜
屋敷に戻ると、毅が出迎えてくれた。
先に仁が一也の様子を伝えていたこともあって毅も多くは尋ねてはこなかった。
「一也が大したことなくてよかった」
拓也も前広も一様に安堵した。
「あれ?ひかるちゃんは?」
ソファーに腰掛けると前広がコーヒーを入れてくれた時にひかるの名を呼んだ。
「ひかるは部屋にいます。今はそっとしておいてやりたいんです」
さりげなく告げると、
「ひかるちゃんのせいではないのに」
「誰も責めたりしないのにな」
拓也も前広も、そして毅も一様に沈んだ顔をした。
「ショックは大きいみたいですね。まだ本当はわたしも混乱してます」
屋敷に戻ってきた時に、できるだけそばにいたいと思ったが、ひかるはひとりになりたいとポツリと呟いた。
自分ならやっぱりひとりになりたいだろうか?と考えて、しばらくひとりにすることにした。
「そっか」
「ショックだよな」