『若恋』榊の恋【完】
しばらくみんなと話をしてから部屋に戻り、灯りのついていない寝室へと入った。
「ひかる」
「……灯りつけないで」
呼び掛けると消え入りそうな声が暗闇から聞こえた。
「ひかる」
病院では吹っ切れたように見えても、声はどこか沈んでいた。
その声を頼りに手探りでベットに横たわるひかるのそばに座り、髪を撫で、小刻みに震えるその頬に指を伸ばした。
伸ばしたその手をひかるがキュッと掴んで頬擦りする。
「一也さん、今頃どうしてるかな…痛みで眠れないかな…」
痛みで苦しんでないかとひかるが心配していた。
「一也は大丈夫ですよ。痛みで眠れなくなるそんな柔な体じゃないです」
「うん、」
「一也は車と相撲を取っても負けなかったじゃないですか」
「うん。そうだったよね」
ひかるに伸ばした手に柔らかな吐息が触れた。