『若恋』榊の恋【完】
静かに横たわるひかるの艶やかな黒髪を梳り頬にくちづけを落とす。
頬から耳へ。
耳からうなじへ。
そして―――胸元へ。
「んっ、」
甘い声を上げるひかるの体がピクリと反応した。
はだけた胸元に自分の印を刻む。
誰にも盗られたりしないように見えるか見えないかのギリギリのところにマーキングをする。
自分は卑怯かもしれない。
ひかるを抱く理由を探していた。
「わたしだけを見てください」
そのいたいけな瞳が映すのは自分の姿だけであってほしい。
「ひかる、俺を…」
『俺を…』俺だけを見ろと。
「ひかる…」
名を呼べばますます苦しくなる。
一度だけだと誓って抱いて大切に守ってきたものを自分の手で壊したくなる。
「さ、さかき、…さん」
喘ぐ吐息が月の光に溶ける。
月明かりに照らされるのは白く浮かび上がる汚れていないひかるの体。