『若恋』榊の恋【完】
動く度にひかるの吐息が敏感に途切れる。
まだ一度しか通っていない道。
痛さしか残せなかった道をまた歩む。
ひかるの膝を抱えてひかるの内へいとおしさをぶつける。
「、」
ピクッ
「我慢するな」
まだ一度しか歩んでない道を時間を掛けてゆっくりと歩んで行く。
「…さか、き、さん」
首に回させた腕にぎゅっと力が入った。
「ひかるがいとおしい」
「あっ、」
短く悲鳴のように声を上げるひかるを最後まで離さず抱いた。
「―――愛してる」
「わたしも」
月の光しかない夜に二度目のひかるを抱いた。
『俺は』
本当の自分へと戻っていく―――
そんな気がした。