『若恋』榊の恋【完】
恋が終わる時
「一也、調子はどうですか?」
「お見舞い持ってきたの」
殺風景な病室にふたりで入った時には驚いた。
大人しく寝ているかと思いきや、窓辺の椅子に座り、痣だらけの腕でペットボトル2本を交互に持ち上げていたのだ。
こめかみの傷があるところには包帯が巻かれてまだ痛々しい。
足の捻挫も酷いものだ。
腫れているのが遠目にもわかる。
「一也さん!」
「あ、ひかるちゃん」
びっくりして思わず声を上げたひかるを見て一也は気まずそうな笑みを浮かべた。
「まだ寝てないとだめだよ!」
慌てて近寄りひかるが一也の体に触れ、支えるように傍らに立つ。
「一也、無理は禁物ですよ」
ひかると一也の姿を横目で見ながら、見舞いに持ってきたケーキの箱をテーブルの上に置いた。
「若とりおさん、それから組長も後からいらっしゃるそうです」
「組長も?」
「随分心配してましたよ」
「………」