『若恋』榊の恋【完】



ひかるが戻ってきた時にはもう話しは終わっていた。


「おかえり、ひかる」

「話しはもう終わったの?」

何も知らないひかるが遠慮がちにドアを開けた。


「難しい話じゃなかったからね」

「ひかるちゃん、ありがとう」

一也も何もなかったようにひかるからコーヒー缶を受け取った。



そうして他愛ない話をして病室を後にする。



「あら?」

「え?」


ひかるを見てすれ違った看護師が声を上げた。

「あなた、五号室の佐伯さんの彼女ですよね?」

「え?」

「佐伯さんの手帳落ちてたからお返しするわ」

「あ、あの。わたし」

ひかるが頭に???を並べて立ち止まり看護師から無理やりに手渡された手帳を受け取った。

「お返ししたからね」

「あの。わたし。違う」

わたし彼女なんかじゃないんです。


慌てて突き返そうとしたけど、看護師はすでに後ろ姿を向けて歩きだしていた。

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