『若恋』榊の恋【完】
受け取った手帳をどうしようかとひかるが見た。
「大事な手帳だったら困るでしょう。返しにいきましょう」
「うん。あっ!」
ひかるが手帳を落として、手帳に挟まっていた数枚の写真が散らばった。
「これ、」
ひかるが口を押さえて絶句する。
看護師が一也の彼女をひかると勘違いしたのも頷けた。
散らばった写真がひかるの隠し撮りだったからだ。
「気づきましたか?」
「…榊さん」
「これが一也の気持ちです」
ひかるが手帳と散らばった写真を手を震わせながら拾い集めた。
「ひかるのことが好きだったんです」
「…一也さんが?わたしを?」
一枚一枚、隠し撮りを見る。
「でも。わたしの気持ちは初めから決まってるから…」
「それはわかってます」
「一也さん、が……」
ひかるが手帳を握りしめて見上げる。
「一也には時間が必要なんです」