『若恋』榊の恋【完】
「クラスのみんなは元気にしてるかい?」
「はい。みんな元気だけど…先生は?少し痩せたみたい」
「ああ、今の仕事になかなか慣れなくてね」
若佐先生がふっと鼻で笑った。
「田舎で穴堀りをしてるよ」
「穴堀り?」
わたしが首を傾げると更に笑った。
「水道管入れる穴掘ったり、建築現場行ったり来たりしてる」
「先生が?」
「もう先生じゃないよ。教師は辞めたんだよ」
どこか自嘲気味に吐き捨てるように言った。
「先生は、なんで学校辞めちゃったの?何かあったの?」
「…何もないよ。田舎に帰りたかっただけだ」
「突然に?」
「そうだな、突然にね」
そんなの嘘だってことぐらいすぐにわかるのに。
「天宮。天宮はまだ大神さんのところにいるのか?」
「え?うん。」
わたしは頷いた。
「そっか、大事にされてるんだな」
「?」
「そっか」
「?」