『若恋』榊の恋【完】
「先生、どうして…」
頭が真っ白になる。
あの生徒たちに優しかった若佐先生がわたしの脇に何かを突きつけている。
「そこ左に曲がってリネン室に入れ」
若佐先生が指示をしてわたしをリネン室に押し込んだ。
振り向き様に見たその右手にはサバイバルナイフ。
「!!」
リネン室は窓がない。
逃げられない!
シーツや枕カバー、そして入院着が無造作に束になっていただけの部屋に押し込められた。
「どうして…先生?」
「『どうして?』それを天宮が言うのか?」
サバイバルナイフを舌の先でペロリと舐める。
キラリと光ったナイフの先がわたしに向けられて怖い。
壁に背中をつけて先生から後退り離れる。
「天宮、そこの後ろのドアを開けろ」
リネン室に入れられた時には気づかなかったけれど、奥にどこかへ繋がるドアがあった。