『若恋』榊の恋【完】
狂ってる!
榊さんを誘き寄せるためのエサ。
榊さんの自由を奪うための人質。
榊さんはわたしを見殺しにしたりしない。
救い出すためなら前みたいに自分の命を投げ出そうとしてしまう。
銃弾を受けようが、刺されようが、わたしの元へ突き進んでくるに違いない。
「ん、ん―、」
榊さんの重荷にはなりたくない。
そう叫んでいた。
「榊に会う前に天宮をもらうかな」
やだあっ!
「んー」
「うるさいよ」
頭を振って拒否したら先生に顎をギュッと掴まれた。
「こんな姿を見たら榊はどうするかな?」
若佐先生がわたしの頬をベロンと舐めた。
舌の感触に体の奥底に衝撃が走り吐きそうになった。
「榊にこの姿を見せてやりたいな」
「!」
痩せて目を窪ませた先生が今度はわたしの首筋を舐めた。
「榊と離れて、ひとりになる時を待ってたんだ。やっとひとりになってくれた」
「え?」