『若恋』榊の恋【完】
一也さんの入院してるこの病院で先生に偶然出会ったんじゃなくて―――
「まさか。天宮は偶然だと思ってたのか。」
甘いな。
にやっ。先生が勝ち誇ったように笑った。
「榊は俺がもうこの土地に戻ってこないだろうと思ってるはずだ。折れた腕が良くなるまでじっと田舎に隠っていた甲斐があった」
なんで?
なんでそこまで榊さんを憎むの?
榊さんが先生に何かしたの?
わたしの視線に気づいた先生は腕を捲り上げて指を指した。
「榊に折られたんだよ」
―――え?
「天宮は眠っていたからな。わからないのも当然か」
「?」
「イタズラしようとしたら、榊に邪魔されて腕を折られた」
―――!!