『若恋』榊の恋【完】
…いつ?
いつそんなことがあったの?
わたし知らない。
先生がわたしにイタズラ?
そんなことされた覚えもない。
いつだって若佐先生は優しくてクラス女子の憧れだった。
そんな先生に襲われたなんてことはない。
「いつ?そんなことがあったのかって顔だな?あれは特別補習の夜だったな」
特別補習?
「薬を飲ませて眠らせた。覚えがないか?」
クスリ?
覚えなんかない。
補習していた時のことはぼんやりしてる。
「わからないのか?可愛いな」
肩を揺らして愉快そうに笑う。
「あの夜に天宮を手に入れそこなってしまった。榊が乱入してこなかったら俺の人生は変わってたはずなのに」
ゆらり。
先生はわたしの前に立つと異様な目付で見下ろした。
そして。
持っていたサバイバルナイフをいきなりわたしの顔の横に突き刺した。
―――きゃあっ!