『若恋』榊の恋【完】
「…先生、嘘でしょう?」
連れて来られたのだって信じられない。
まだ、さっきの話だって信じてるわけじゃない。
何かの間違いだって、
何かわたしが見た悪い夢なんじゃないかって、そんなふうに思えた。
「天宮、夢なんかじゃないよ」
「だって」
「腕を折られたところを見せただろ?」
「それも何かの間違いじゃ…」
きゃっ!
顎を取られてビクッとして後ろに後退る。
「俺もここで果てる。榊もだが天宮おまえもだ」
いい舞台を選んだろう?
「!」
「もう引き返さない」
先生は後ろ手に縛っていた紐を外してわたしを自由にしてくれた。
「逃げられるもんなら逃げてもいい。逃げられたらの話だけどな」
「先生、ホントに死ぬつもりなの」
「ああ、生きてても地獄だしな」
「やり直しはできるよ。だから、」