『若恋』榊の恋【完】
「ひかる」
抱き留めていた腕の中で震えるひかるは蒼白で今にも儚くなってしまいそうだ。
ひかるの服は無惨に胸元が裂けている。
首筋には自分がつけたものではない赤い痕が散っている。
「怪我はないですか?」
小刻みに震えしがみつくひかるを立たせて後ろに庇い下がる。
―――いったい誰が?
「榊さん、久しぶりですね」
「若佐!」
ひかるを拐ったのは若佐だと知り、二階から悠然と見下ろしている姿に腸が煮え繰り返った。
数ヶ月前にひかるに手を出そうとして寸前で阻止されて腕を折られた。
ひかるの目の前から去ることで許してやったのが甘かったのだとひかるが震えてるのを見て痛感した。
引き裂かれた服。
ひかるの手首に縛られた痕。
首筋に散る赤い花。
もしかしたら―――最後まで。
「天宮はいい声で啼いてくれましたよ」
「!」