『若恋』榊の恋【完】
そうはいかない。
激情に呑まれるわけにはいかない。
深呼吸をして持ってきたモノを真横に構えた。
「組長…すいません」
封印を破ります。
紙縒りで封印をしていたモノを指を当て解き、静かにゆっくりと鞘から刀身を抜き出した。
刃こぼれもない見事なものだ。
これまでにも何度かひとの血を吸ったんだろう。
妖しいまでの光を放つ。
「ほう、封印されてたのか」
「………」
「血を吸ったことがある代物だな」
「………」
「俺には似合いかもな」
「…若佐」
自虐的に頬を歪める若佐を見る。
迷わない。
―――奪い返す
「そうだな。俺が勝つか、榊おまえが勝つか」
「わたしは負けませんよ」
「やめて!」
ひかるが半狂乱で叫んだ。
若佐はひかるを突き飛ばしてリビングの端に押しやり、ゆっくりした動作で真上に構えた。