『若恋』榊の恋【完】
―――勝ってひかるを奪い返す。
「若佐先生、やめて!」
「天宮、うるさい。気が散る」
「やだ!やめて!」
上段に構えた若佐はひかるの叫び声を無視して踏み込んできた。
ガキッ
鈍い金属音。
踏み込まれても力では負けない。
押し返して一度間を取った。
「ひかるを返してください」
若佐を見据えると、鼻で笑った。
「俺を倒したらな」
勝つ自信があるのがわかる。
かなり腕が立つ。
うかつに踏み込めない。
ジリジリと間を詰めて懐に入る隙を探したが見つからない。
「先生やめて!榊さん!」
ひかるが若佐の後ろで両手を握りしめているのが見えた。