『若恋』榊の恋【完】
ひかるが覆い被さるようにして若佐の一撃を止めた。
若佐は驚きの表情のままひかると自分を見て固まっている。
ポタリとひかるの腕から伝い血が垂れてくる。
「ひかる、腕を見せて」
「大したことないから。大丈夫」
気丈に腕を隠そうとするひかるの肩を抱き体を反転させた。
若佐に斬られた腕を確かめる。
「やだなぁ、かすり傷だよ」
「………」
隠そうとする腕を捉えて見た傷は女の子が負っていい傷ではなかった。
突然、若佐が折れた劔を見て高笑いをした。
「負けたよ。もう。いい」
ゆらりと立ち上がると握っていた劔が床に落ちた。
「……天宮、お別れだ」
「先生?」
「もういい」
「先生、どこへ行くの?」