『若恋』榊の恋【完】
若佐はフッと口角を上げた。
その笑みを見た瞬間に、何も言わなくてもわかった。
もう命を捨てることだけはしないだろうと。
ひかるだけは若佐が苦しんでも生きていて欲しいと願ったから。
「さよなら、天宮。いつかどこかでまた」
「…先生?」
ひかるの頭にポンポンと手を乗せて笑むと、そして振り向きもせずに緑の林の中へと姿を消した。
「先生!」
「ひかる。泣かなくていいです。いつかきっとどこかで会えます」
林の中へと消えていった背中に向かって叫び、大粒のひかるの涙が溢れた。