『若恋』榊の恋【完】
「ひかる。きっといつかまた会えます」
「うん」
ひっく。
しゃくりあげるひかるを抱き締める。
「彼は生きていけます。ひかるがそう願ったから」
「うん」
「だから、もう泣かなくていいですよ。彼にはしっかりと気持ちは届いたから」
「うん」
ひっく。
睫毛が濡れて大粒の涙が溢れる横顔にくちづける。
「彼は大丈夫ですよ」
どんな辛いことがこの先にあったとしても、すべてを受け入れてそれでも許してくれたひとがいたと知ったから。
「さあ、顔を上げて」
「うん」
「ほら目が真っ赤ですよ。鼻も赤い」
「…見ないでよ。ブサイクだから」
「ブサイクなんかじゃありませんよ。泣いてる顔も怒ってる顔も可愛い」
顔を恥ずかしそうに背けるのを許さずに捉えてキスをした。
「全部、可愛い」
甘い香りがする体を抱きすくめる。
「無事でよかった」
「……榊さん」