『若恋』榊の恋【完】
「ひかるは少し目を離すと拐われてしまう。これで何度目でしょうね」
「……わかんない」
「3度目と言うことにしておきましょうか」
甘くて柔らかいくちびるが拗ねたように尖りそれがまた可愛かった。
「さあ、戻りましょうか」
「うん」
「腕、痛みますか?」
「ううん。ちょっと切れただけだから」
涙が引いて落ち着いたひかるを抱き上げて朽ちかけたログハウスまで戻った。
ひかるを下ろし、組長から預かった剱を引き抜き鞘に戻して、若佐の折れた剱を見る。
「先生は居合いしてたから」
「居合いですか?」
「有段者なの。」
本気になればひかるごと自分を斬って捨てることだってできたはずだった。
若佐はひかるには手を出せなかったんだとはっきりわかった。
「戻りましょうか、みんなが心配してる」