『若恋』榊の恋【完】





左手に刀身を持ち右手でひかるの手を引いて、この場所から―――






車の急停車する音。

バタンと車のドアが閉まる音がして、ログハウスの扉を乱暴に開け放つ誰かが。


「っ、」


―――誰だ?

思わず身構えてひかるを背に庇うと。




一也?




頭に包帯を巻いた一也が血相を変えてそこに立っていた。



「ひかるちゃん…無事?」



病院から抜け出してきたのは明白だった。
白い包帯が痛々しい。



「榊さん、ひかるちゃんは?」

「無事です。一也、どうしてここが」

なんでここに?


指定された場所の地図は自分が持っている。

あと、この場所を知っているのは?



仁と。

―――拓也?



「拓也から無理やり聞き出して…」


ひかるを見る瞳が揺らいでそして一也が瞼を閉じた。


「敵わない、ですね」


あははと乾いた笑いをこぼした。






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