『若恋』榊の恋【完】
「榊さんには敵いません」
「……一也」
「単身で乗り込んでひかるちゃんを救い出して。俺には到底無理だった」
戸口で一也の体がグラリと傾いてズルズルと柱にもたれて倒れ込んだ。
上を向いて目に手のひらを当てる。
「榊さんには敵わないや」
「一也さん。足が…」
「ひかるちゃん、俺は大丈夫だから」
崩れた一也は目を覆ったままひかるが触れるのを首を横に振って制した。
一也の足が更に腫れててひかるが眉をひそめる。
「でも、」
「ひかるちゃん、俺の話を聞いてくれますか?」
「え?」
ひかるが戸惑って自分を振り向いた。
一也が言いたいことと言ったら思い当たることは一つしかなかった。
頷いてひかるの肩を抱いて、一也の前に進み出る。
「一也さん?」
一也がゆっくりと顔を上げて戸口に掴まり立ち上がった。