『若恋』榊の恋【完】
「俺はひかるちゃんが好きだったよ」
「!」
「初めて会った時から好きだった。一目惚れだった」
真っ直ぐに送られてくる潔い視線にひかるの肩を支えていた自分の胸がドキンと鳴った。
「わたしは榊さんが好きなんです」
「うん、わかってる」
「一也さんの気持ちには今もこれから先も応えられないから。だから、」
「うん、それもわかってる」
見てたらわかるから。と、一也が苦い笑いを溢した。
「諦めなきゃって思いながらも、榊さんから盗れればなって思うとこもあったんだ」
汚いよな。
一也はそう言ってたけれどひとは誰でも好きなひとを他に渡したくないものだ。
現に自分だってひかるを一度は突き放しておきながら誰かの手に渡る、誰かに奪われるとなったら許せなかった。
「押し付けるとかじゃないから。俺なりのけじめ」