『若恋』榊の恋【完】




―――俺なりのけじめ。




「ごめんなさい」

「ひかるちゃんが謝ることないよ。きっぱり断られなければ諦めもつかないから、これでいいんだよ」


「一也さん、ありがとう」

「お礼言われるようなことなんて何もしてないし。ね?」


笑ってくれたのが有り難かった。

ひかるがホッとして肩から緊張が解けたのがわかった。



「一也」

「榊さん。これでよかったですよ」


晴れやかな顔で笑う一也に胸が痛んだ。

命をかけて護りたいひとを、想いを切るのは、胸が張り裂けるだろう。



「ひかるちゃん」

「ん?」

「ありがとう」





ひかるに向けられた一也のその顔を一生忘れないだろう。




―――胸が痛んだ。








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